愛車を買取に出したい時に、一見便利なのが一括査定です。しかし一括査定には、様々なデメリットや注意点が潜んでおり、トラブルに巻き込まれるケースも後を絶ちません。
ここでは
- 一括査定のリスクを避けたい
- 一括査定のメリット・デメリットを詳しく知りたい
- これから愛車の売却を検討している
という方々に向けて、一括査定の実態と上手な利用方法、そしてあなたの愛車に一番向いているお得な売却方法について、解説していきます。
車の一括査定とは
車の一括査定とは、カーセンサーやナビクル、MOTAのようなWebサイト上から複数社に同時に査定を申し込むやり方です。サイトにより情報が流れる中古車買取店は異なりますが、いずれにしても一度の申し込みで複数社から見積もりをもらえる便利なサービスとして定着しています。
一括査定は、初期の申し込み段階では手間も少なく、実際に複数社からの査定を比較出来る為、場合によっては思った以上の高額で売れるという大きなメリットがあります。
一方、様々なデメリット・リスクがあり、中古車買取の闇と言えるような事例も散見される為、近年は敬遠する人が増えています。
一括査定のデメリットやリスク・注意点
一括査定には主に以下のようなデメリット・リスクがあります。
- 大量の営業電話（メール）がくる
- 複数社との交渉となり対応に大きな手間と時間がかかる
- 買取店が談合しているケースがある
- 地域によっては買取店が少ない
- 一括査定に向いていない車がある
以下で詳しく見ていきます。
営業電話がしつこい可能性がある
一括査定最大のデメリットがこちらです。一括査定を申し込んだ瞬間、情報を受け取った業者から一斉に電話がかかってきます。何社から連絡があるかは申し込んだサイトやエリアによるので一概に言えませんが、ひどいケースでは誇張でも何でもなく、1日中電話がなりやまず、仕事やプライベートに支障が出るほどです。
これらはほんの1例で、探せばいくらでも口コミが出てくるほど一括査定の電話ラッシュは有名な話です。また「営業電話なし！」と謳っていたり、メールでの連絡だけを指定していても、それを無視して電話をかけてくる業者も後を絶ちません。
中には直接査定を急がせたり、強引なセールストークで買取を迫るような業者もいる事から、電話でのコミュニケーションや交渉事が苦手な方には全くオススメ出来ないのが一括査定です。
複数の業者とのやり取りが大変
一括査定を申し込むと、電話（メール）で多数の買取業者から連絡が来ます。査定額を比較する為には、それら一つ一つに対応、交渉をしなければならず、非常に大きな手間となり、多大な時間をかける必要があります。
買取業者がつながっている可能性がある
あくまでもエリアや買取業者によりますが、別会社の査定員同士に横のつながりがあり、一括査定の申し込みが入った時点で連絡を取り合って、買取価格を談合しているケースがあります。
中古車買取の査定談合に関しては明確なルールや罰則なども無いため、これを買取業者側の知恵と見るか、闇と見るかは人それぞれですが、現実として談合はあります。
それによって、本来であればより高値で売れたであろう車を安く手放してしまうリスクが一括査定にはあります。
査定員の談合の具体例
- 本来妥当な査定金額より低い価格で一斉にスタートし、後から少し上乗せした金額を提示して高く買い取ってもらったと錯覚させる
- 「○○万円以上になったらうちは降りる」といった価格のラインを予め打ち合わせている
- 「今回はうちに譲ってくれ」等、同業者同士で買取を譲り合っている（競争が生まれない）
地域によっては買取業者が限定される
車種によってはそもそも買取をしていない、不得意な分野（外車など）というケースもあり、一括査定だからと言って、必ずしも多数の業者同士の競争が生まれるわけではありません。
車によっては一括査定がむいていない
一括査定には向いている車と向いていない車があります。
一括査定が向いていない車の例
- 年式が古い車
- 過走行車（15万km以上）
- 修復歴がある車
- 事故車
- 需要の少ないマイナー車
一括査定のメリット
一括査定には様々なデメリット・注意点がありますが、勿論メリットも存在します。
- 複数業者に一度に査定を依頼できる
- 業者間の査定を比較して高く売れる
中でも「高く売りたい」は誰もが望むところでしょう。詳細を以下で解説していきます。
一度の申し込みで複数の業者に依頼できる
複数の業者から相見積もりを取りたい場合、中古車買取業者の1軒1軒に査定を依頼するのは非常に手間がかかります。一括査定は申し込みの時点で近隣エリアの複数の業者に情報が流れ、業者の方から連絡が来るので、電話が苦にならないような方であれば楽に比較が出来るというメリットがあります。
複数業者の中から最も高い業者に車を売却できる
一括査定は、車を1円でも高く売りたいという方には向いているやり方です。複数の査定を比較できるだけでなく、各業者と直接交渉が可能ですから、場合によっては相場以上の査定額を引き出す事も可能です。
高額買取を可能にするワン速方式とは？
自動車試乗ブロガー「ワンダー速報」の運営者が提唱するやり方で、YouTubeでも紹介されています。具体的な方法は以下の通りです。
- 予めディーラー下取りやナビクル等で一度査定額を出す
- 一括査定に出して連絡がきた全買取店を同時刻に集めて現車査定をする
- 集めた査定員に①の査定額を下回ったら売らないと予め伝える
- さらに入札方式（オークションではなく一発勝負）で金額を書かせる
- 一番高い入札をした業者に買い取らせる
ポイントは予め査定の目安を出しておくことと、同時刻に全業者を集めて一発入札をさせるというところです。一括査定で高額買取を実現させた方の多くが採用している方式ですので、是非とも参考にしてみてください。
ちなみに、同時刻に査定員を集めるのを嫌がる業者もいますが、そのような業者は談合しているか元々高く買い取る気が無い業者の可能性が高いとも言えるので、そのような業者は避けるのが無難でしょう。
ただし、このやり方が有効なのは、最低でも数十万円程度の値段がつくような車です。買取金額が安い車の場合、手間に見合わないケースも多い点にはご注意下さい。
一括査定でよくあるトラブルと対処法
使い方によっては高額査定に結び付ける事もできる一括査定ですが、時にトラブルに巻き込まれてしまうケースもあります。
- 査定額が契約した後に下がる減額トラブル
- 強引な営業トラブル
- キャンセル料を巡るトラブル
主に上記のようなトラブルがあり、注意が必要です。以下で詳しく解説していきます。
契約後に査定額が下がる
これは、現車査定を終えて金額も決定し、売買契約を済ませて車を引き取ってもらった後に、査定時には分からなかった何らかの不具合を理由に、後から減額を求められるというトラブルです。
一括査定は申し込み後に電話でやり取りをした後、実物を見て最終的な査定額を出します。その為、買取金額が決定するのは現車確認時となりますが、その際の査定場所は自宅や近隣の広い駐車場などまで査定員が来る出張査定のケースが多く、十分な設備があるとは言えません。出張査定の場合、どうしてもエンジン内部を始めとする外からは分からない部分の不具合が後から発覚するケースがあります。
このようなケースでは、ある程度の減額はやむを得ないと言えましょう。
一方、減額トラブルには以下のような悪質なケースも存在します。
- わざと高額査定を出して引き取った後、難癖をつけて相場より安い金額で買い取る
- 査定員の技量不足で見逃した不具合の責任を売主になすりつけてくる
実際に国民生活センターには以下のような相談が寄せられています。
～修復歴を告げ、２回も査定して決まった売却額が、突然減額された～
車を売却しようと店舗へ出向き査定を受けた。その後、再び同じ店舗で、駐車中にフロント左側をぶつけられ修理した等の修復歴を全て告げたうえで再度査定してもらい、提示額に納得して契約した。ところが一昨日事業者から、「車をオークションに出したら、事故車扱いとなった。契約金額から約 30 万円減額してもらえないか」と連絡があった。２回も査定したうえで契約したのに納得いかない。契約通りの金額を支払って欲しい。（2022 年３月受付、40 歳代、男性）
～引き渡した 10 日後に、事業者から一方的に契約を解除すると言われた～
事業者を呼んで車を査定してもらい契約した。10 日後に入金される予定だったが、突然、事業者から「この契約はなかったことにしてほしい」と連絡があった。理由を聞くと「担当者が現地で車を確認したうえで金額を決めたが、車の引き取り後、もう一度技術者が細かく点検したところ、事故車扱いになるようなゆがみが見つかったため」と説明された。この車は新車で購入したが、事故を起こしたことがあり、査定時に「板金塗装もしている」と修復箇所を示したうえで査定額が決まった。一方的に解約すると事業者に言われても納得できない。（2022 年３月受付、50 歳代、男性）
引用元：増加する中古自動車の売却トラブル－強引な勧誘やキャンセル妨害も（※PDEファイル）
車両引き渡し後の査定額の減額トラブルは、一括査定を利用する上では最も注意すべきトラブルです。
と言うのも、一括査定は現車確認時に査定額が決まり、そのまま契約という流れが多く、どうしても細かい部分までは目が行き届かず、場の雰囲気に流されるままに契約してしまいがちだからです。
このような後からの減額トラブルについては国民生活センターで以下の様な解釈がされています。
消費者の自宅で査定を行う訪問買取は、事業者の店舗で行う査定と比べて設備面が充実していないことから、正確な査定ができないリスクがあります。しかし、事業者はこのリスクを承知のうえでプロとして車の査定額を出しています。消費者から修復歴や事故歴を聞いたうえで査定額を決定したにもかかわらず、車の引渡後になって、その修復歴や事故歴を理由に減額することは問題があります。
～中略～
（４）修復歴や事故歴を事前に適切に告げていた場合、契約後の修復歴等を理由とした契約の解除や減額には応じる必要はありません。車両に「隠れた瑕疵（かし）」があって、契約時に消費者が故意または過失により、事業者にこれを告げなかった場合、事業者は消費者に対し、契約不適合責任に基づいて減額請求や契約解除を求めることができる場合があります。売却する車に修復歴や事故歴があると知っていた場合は、必ず査定時に事業者へ告げましょう。一方、修復歴や事故歴を告げたにもかかわらず、これらを理由として事業者から契約後に減額や解約を求められた場合は応じる必要はありません。事業者は査定のプロとしての注意を払って査定額を算出しており、一度合意した契約内容について一方的に変更することはできません。
引用元：国民生活センター「増加する中古自動車の売却トラブル」※PDFファイル
このように査定時に、事故歴や修復歴について正確な情報を伝えていたら、基本的に後からの減額に応じる必要はありません。また、中古車を購入して買取に出す場合など事故・修復歴がはっきりしない場合などは分からないと伝え点検してもらいましょう。
それでも後からの減額が嫌な方は、査定時にしっかりと減額のケースがどの様な場合に起きるのか確認したり、初めから減額なしを謳っている業者を選ぶのがいいでしょう。
強引な営業で納得していない契約をしてしまう
次に多いトラブルが査定員による強引な営業です。一括査定で査定額が最終的に決まる現車確認時は、対面で様々なやり取りを行います。その際、押しが強いというレベルを通り越して、脅迫的な言動で契約を迫るような悪質な業者も中には存在します。
～査定時に強引に契約させられ、車を持っていかれた～
インターネットで一括査定サイトを利用し査定を依頼したところ、５社から連絡があり、その中の１社が自宅へ査定に来た。「ドアに修理歴がある。事故車なので15万円だが、今日すぐに引き渡せば 25 万円で買い取る」と言い、強引に契約させられ、車を持っていってしまった。契約書は携帯電話にメールで送付され、紙の書面は受け取っていない。30分後に担当者へ「他社の査定額と比較したいので車を戻してほしい」と伝えたが、「今から車を返すのは面倒だ。他社にはこちらから連絡する」と言い、返してもらえない。25 万円も受け取っていない。解約して車を取り戻したい。 （2022 年２月受付、70 歳代、女性）
～事業者が居座り帰らない様子だったので、やむなく契約してしまった～
査定のため、午前に１社、午後に２社、自宅訪問を依頼した。午前中に来た事業者からは、査定後、買取額として約 320 万円が提示された。「午後に来る２社の査定額も聞いてから決めたい」
と伝えたところ、非常に強引な態度で居座られ、契約するまで帰らない様子だったので、やむなくタブレットに署名して契約した。午後の２社の査定額は午前の事業者よりも高かったため、午前の事業者に断る電話をしたところ、「解約はできない。どうしても解約するのであれば店に来て、免許証を出してもらうことになる」と言われ、その後も 20 回近く電話がかかってきた。強引に勧誘され、やむなくサインしたのに店に行かなければ解約できないのか。（2022 年９月受付、20 歳代、男性）
引用元：増加する中古自動車の売却トラブル－強引な勧誘やキャンセル妨害も（PDFファイル）
また、強引な営業は現車確認時だけでなく、電話でも多数見られ、トラブルに発展しないまでも不快な思いをしている方は多いようです。
一括査定では、買取業者が同業他社を出し抜く為に、強引な営業をかけてくることは珍しい事ではありません。
このような強引な営業に対する対策は「納得できないなら契約書にサインしない」「しっかりと売らない意思を伝える」べきです。それでも帰らない営業に当たってしまったなら、国民生活センターや警察に電話しましょう。
ただ、交渉事が苦手な方や押しに弱い方は利用しないのが一番の対策とも言えます。
キャンセル時に高額なキャンセル料
一旦契約を済ませた後、何らかの理由で契約をキャンセルしたいと申し出た場合、相応のキャンセル料が発生するケースがあります。買取業者も時間と手間をかけて査定・契約をした以上、売主側からの一方的なキャンセルは迷惑行為とも言えますので、売主側に過失がある場合にキャンセル料が発生するのは仕方のない事と言えます。
しかし、中には悪質な事例も見られます。
～高額なキャンセル料の算出明細が示されない～
一括査定サイトに登録後、電話がかかってきた事業者の店舗で車を査定してもらった。約 230万円が提示されたので契約し、その日のうちにキャンセルを申し出たら、事業者から約 40 万円のキャンセル料を請求された。売却価格の 20％で、請求根拠は契約書に記載してあるという。あまりにも高額なので、事業者へキャンセル料の根拠となる損害の明細を提示するよう求めたところ、「契約当日にキャンセルを申し出ても契約書に記載通りのキャンセル料がかかる。キャンセル料は販売する時の利益の損失を根拠に計算している」と主張し、明細を示さない。支払いたくない。（2022 年 12 月受付、20 歳代、男性）
～高額なキャンセル料の設定やキャンセル妨害～
この他に、キャンセルを申し出た後に事業者から 20 回近くも電話がかかってきた（事例２）、契約書に記載されたキャンセル可能期間であるにもかかわらず、解約ができないと言われたなど、キャンセル妨害のケースも寄せられています。
引用元：増加する中古自動車の売却トラブル－強引な勧誘やキャンセル妨害も（※PDFファイル）
いずれも慎重に検討した上で契約書にサインしていれば防げるトラブルと言えますが、買取業者側はそういった心理を分かった上で、あの手この手で契約に誘導します。
一括査定は、現車確認が必要で、その際には必ず査定員と売り主とのコミュニケーションが発生します。営業マンにとってはそここそがチャンスとばかりに隙をついてくるので、キャンセル料にまつわるトラブルへ発展しないよう慎重な取引を心掛ける必要があります。
車の売却で一括査定が向いている人・車と向いていない人・車
ここまでご紹介してきた通り、一括査定には間違いなく向き不向きがあります。その為、車を売却する際には、自分の得手・不得手を予め分かっておくこともトラブルに巻き込まれない為に非常に重要なポイントです。
一括査定に向いているのはこんな人・車
- 手間を惜しまず高く売りたい人
- 交渉事が得意な人
- 早く現金化したい人
- 需要が高い人気車種
一括査定に向いていないのはこんな人・車
- 売却に手間をかけたくない人
- 交渉が苦手な人
- 買取金額が安い事が予想される車
一括査定最大のメリットは、やり方次第で愛車が高く売れる可能性が高い事です。中でも、需要が高く、中古車の回転率が良い人気車種は、業者間の競争が激しくなり、一括査定で高値がつくケースは少なくありません。少なくとも、ディーラー下取りよりは高く売れる事がほとんどです。
また、一括査定の登録業者にはビッグモーターやガリバー、ラビット等、多数の大手中古車買取業者が含まれています。資金力のある大手の業者ほど「需要が高い車に高値をつけて」「需要が低い車は買い叩く」という傾向がある為、その点も人気車種にとっては有利なポイントと言えるでしょう。
しかし、その分とんでもない数の営業電話で百戦錬磨の営業マン（査定員）を相手にしなければなりません。高値での売却を狙うには、売り主自身に愛車の正確な相場の把握、査定にまつわる正しい知識、そしてタフな交渉力が求められます。その為、「そこまでして最高値じゃなくても良いよ…」という方にとっては不向きと言えます。
一括査定に向いていない方が車を安心して高く売るには
車がそれほど人気車種ではない、手間をかけずに売却したい、面倒な交渉はしたくない、という方に向いているのはセルカを始めとするカーオークションサイトです。
カーオークションは、サイトを通じて数千社の中古車買取業者へ情報を流し、Web上で開催されるオークションで車を売却するシステムですが、以下のようなメリットがあります。
- やり取りがセルカ1社で済む
- 相談員が最後までサポートするので初心者でも安心
- 買取業者とのやり取りは一切ない
- 再販が難しい車でも再販目的ではない業者（海外販路が強い業者やパーツ取り業者など）からの入札も期待できる
- 最低希望落札価格が設定できるので、希望額に届かなければ売らなくても良い
- 売れるまで費用・手数料は一切かからない
- 買取業者との交渉が発生してもセルカが代行するので売却後のトラブルの心配がない
このように、一括査定のデメリットを全てメリットに変えてくれるような取引が可能で、一括査定に向いていない方や車種の場合、カーオークションサイトは是非とも知っておいて欲しい選択肢の一つと言えるでしょう。
尚、カーオークションサイトにも
- 必ずしも高く売れるわけではない
- 入金までに時間がかかる
といったデメリットもあります。詳細は以下のページをご覧下さい。
まとめ
- 一括査定はとにかく営業攻撃がヒドイ
- 業者との直接交渉が精神的に疲れる
- 正しい知識と交渉術が無いとトラブルに巻き込まれる恐れがある
- 一括査定が苦手な方はカーオークションサイトがオススメ
車の一括査定には様々なデメリット・注意点があります。中でも、営業マンとの直接交渉は時間や手間がかかる上、強いメンタルを持っている方でなければ、本来望まないような契約を迫られて、大きなトラブルに発展してしまう事例も決して少なくありません。
勿論、場合によっては高額での売却を狙える一括査定ですが、メリットとデメリットをしっかり理解した上で、どちらが自分に向いているのか、今一度考慮し、最適な方法を選んでくださいね。